20130126 報告 第97回セミナー 2013年1月26日(土)、長野県立歴史館において領地支配をめぐる研究会を開催しました。 福島正樹会員から「松本藩御預役所の年貢掛札について」の研究報告、後藤芳孝会員から「松本城下絵図について」の 報告がありました。 講演は高知県から土佐山内家宝物資料館長の渡部淳氏を講師に迎え「土佐藩の領知高をめぐってー領知改郷村高辻帳と 国絵図附属郷帳ー」と題して行われました。参加者61名。 20130518 報告 2013年度 総会・記念講演会 5月18日(土)、松本市あがたの森文化会館を会場に総会が開催されました。2012年度事業報告、2013年度事業計画、 2012年度決算、2013年度予算案の審議がなされました。 14時10分から長野県立歴史館学芸員の林 誠氏から『伝飯島二水筆「信濃国埴科郡西条邑六工製糸場之図」』と題しての 研究報告がありました。よく知られている六工製糸場之図ですが、詳細な絵解きから画面設計の緻密さが指摘されました。 15時から東京外国語大学大学院教授吉田ゆり子氏から『城と木−信州松本城と飯田城を中心として−』と題して、 記念講演がありました。 松本城や飯田城の絵図の詳細な分析から、江戸時代どのような樹木景観が城郭にあったのか、樹木を配した意図は 何なのか、多数の史料を駆使し論証されました。 今回の研究報告、記念講演は、絵画資料、絵図資料をどのような視点を持ち分析していったらいいのか、多くの示唆が あり大変有意義な会となりました。 20140125 報告 第98回セミナー 第98回セミナーが2014年1月25日(土)、長野県立歴史館(千曲市屋代)で行われました。信濃史学会山浦寿委員長の 挨拶に続き、会場館の代表として福島正樹県立歴史館総合情報課長の挨拶がありました。 午前11時から、安曇野市豊科郷土博物館学芸員の逸見大悟氏がパワーポイントを使って「穂高神社御船祭りの現存 最古の古文書について」の研究報告(写真)を行いました。 午後1時からは長野県立歴史館専門主事山崎会理氏が「屋代家『系譜』に記された家康書状の近世的価値について」の 報告がありました。引き続き、東京大学名誉教授藤田覚氏から「近世村文書の古文書学」と題して講演がありました。 午後から聴講者が増え、最終的には152名の参加者がありました。 今回は、「近世史料論」をテーマに研究会を設定しましたが、会員や一般参加者の関心が高く、内容の濃い研究会と なりました。 20140517 2014年度 定期総会・研究会報告 2014年5月17日(土)、松本市あがたの森文化会館を会場に総会が開催されました。2013年度事業報告、2013年度決算、 2014 年度予算案の審議がなされました。また、一昨年度末から検討されてきた会則の改正が承認されました。次に 新役員の 提案がなされ、満場一致で承認され、山浦寿新会長が選出されました。なお、2014年度事業計画は新役員 体制のもと、検討のうえ、実行に移されます。 14時10分から金澤大典会員から「昭和戦前の観光行政と長野県」と題しての研究報告がありました。パンフレットや グラフを駆使し、戦前の観光行政のひろがりがどのようであったのか、発表がなされました。15時から日本大学大学院 講師柴辻俊六氏から「最近の武田氏研究と信濃」と題して、記念講演がありました。武田氏に関する研究が2014年まで どのようになされてきたのか、詳細な研究動向をお伺いしました。多くの示唆があり大変有意義な会となりました。 20140921 信濃史学会 9月例会報告 2014年9月21日(日)は、雨の予想もありましたが、秋晴れの気持ちのよい天候となりました。午前中、駒ケ根市 大御食(おおみけ)神社の解説をお聞きし、午後、例大祭を見学しました。 午前10時半、駒ケ根市下平の長春寺に集合。長野県民俗の会三石稔氏の司会により例会が始められました。三石氏から 県内の獅子舞の分布状況をお伺いしました。獅子が町内を練り歩く行事は駒ヶ根市から飯田市までのエリアを中心に 分布するとのことでした。 井上井月顕彰会・ビジュアルフォークロアが制作した祭りの様子を撮影したDVDを鑑賞した後、吉沢康道住職から 祭りの概要をお伺いしました。 大御食神社は国道153号の東側と福岡地区などの氏子により運営されている神社です。氏子を5地区に分け、5年ごとに 獅子舞・獅子練りの年番が回ってくるとのことでした。 午後1時半〜午後3時、長春寺の前を通過する獅子舞・獅子練りを見学。 大御食神社に移動し、明治初年に書かれた神社に関する記録や、神代文字社伝記を拝見。 午後5時半から神社前で始まった獅子舞・獅子練りを見学し、午後7時15分散会となりました。 本例会は、長野県民俗の会例会と合同開催で、参加者9名 20141129 信濃史学会 11月例会報告 2014年11月29日(土)、新築移転した松本市文書館の見学後、松本市駅前会館に移動し、地方史研究協議会主催の シンポジウム「基礎的自治体の文書館の現状と課題」が開催されました。信濃史学会と松本市が後援。 主催者の趣旨説明の後、松本市文書館の小松芳郎氏から文書館設立に至る経緯についての発表がありました。1989年 から始まった新松本市史の編纂事業のため、行政文書の整理・分類を行ったが、文書館の設立を予定していたため スムーズに引き継ぐことが出来たとのことでした。 小布施町文書館の山岸正男氏からは、昨年度開館した文書館の設立経緯と、史料の整理・公開についての現状報告が ありました。 参加者は50名。 20150124 99回セミナー報告 第99回セミナーが2015年1月24日(土)、長野県立歴史館(千曲市屋代)で行われました。信濃史学会小松芳郎事業 委員長の挨拶に続き、会場館の代表として市川正夫県立歴史館学芸部長の挨拶がありました。 午前10時50から、大橋昌人会員が「坂城町の文書館に向けて」の報告(写真)を行いました。午後1時からは山口 通之会員が「伊那市西箕輪羽広誌編纂と文書整理」の報告がありました。引き続き、信濃史学会会員で愛知大学教授 である神谷智氏から「歴史としてみる史料調査ー「記録史料学と歴史研究のはざま」で再考するー」と題して講演が ありました。参加者68名。 今回は、「近世史料と文書調査」をテーマに研究会を設定しましたが、地域で抱えている文書をどのように整理し 後世に伝えていくか、示唆を与える研究会になりました。 20150523 2015年度定期総会・研究会の報告 2015年5月23日(土)、10時30分から松本あがたの森文化会館の会議室で、理事会・委員会が開かれました。総会に だされる議事内容の提案が行われました。特に話題となったのが、神城断層地震で被害に遭われたお宅の災害資料 レスキューについてでした。4月から5月にかけて有志ボランティアによる資料レスキューがなされてきたことを聞き ました。信濃史学会としてどのように取り組んでいったらいいのか今後の検討課題となりました。 13時から、定期総会が行われ、昨年度の事業報告、決算報告、会計監査報告がなされ、本年度の事業計画、予算案が 決定されました。理事会の中で、話題になった災害資料レスキューについての報告がなされ、今後、情報提供を 求めながら信濃史学会でどのように取り組んで行くか模索することになりました。 14時から本島和人会員から「満州信濃村建設と県議会・地域メディア」と題した報告がなされました。詳細な史料調査 の提示と、分析でした。 15時5分から長野県短期大学の上條宏之学長から「信濃における富岡式蒸気器械製糸技術定着の史的考察−官営富岡 製糸場の歴史的役割をどう評価するか−」と題した講演を聴きました。製糸技術の詳細な分析の講演でした。 会終了後、17時30分から講師を囲んで松本駅前で懇親会を行いました。 20150912 第1回地方史講座の報告 今年度から歴史愛好家を含めて多くの方に身近な地域の歴史に親しんでいただくとともに、広く様々な視点から地域の 歴史を見つめ直していくことを目的とし、「地方史講座」を設けました。 2015年9月12日(土)午後2時から4時まで、穂高神社参集殿にて第1回の地方史講座を行いました。「安曇族信濃来住 の伝承をめぐって」と題して、本会会員の巻山圭一氏が講座を担当しました。講演後、安曇族をめぐって活発な議論が なされました。参加者60名。穂高神社との共催、安曇野市教育委員会の後援をいただきました。 20151128 第100回セミナー報告 第100回セミナーが2015年11月28日(土)、長野県立歴史館(千曲市屋代)で行われました。例年、1〜2月にこの セミナーを実施していましたが、雪の少ない時期に変更してほしいとの要望から11月実施となりました。 会場館である県立歴史館の代表として、青木隆幸学芸部長が歓迎の挨拶をされ、続いて信濃史学会小松芳郎事業委員長 から主催団体を代表して挨拶がありました。 午前10時40から、大滝敦士会員が「中野市域の災害史研究と史料保全」の報告を行いました。午前11時25分からは 中央大学大学院生の北村厚介さんが「宝暦期の千曲川治水」の報告がありました。 昼を挟んで午後1時10分から山田正子会員の「発願29か村の千曲川瀬直し―明治維新下の治水事業―」の報告が ありました。引き続き、信濃史学会会員で 中央大学教授である山崎圭氏から「幕末の千曲川治水」と題して講演があり ました。参加者54名。 中野市では、市教育委員会と中央大学の協同で、千曲川の治水を主とする地域の災害関係史料の調査・研究が進められて います。今回は、その成果をもとに「災害に向き合う地域社会」と題して研究会を開催しました。 近世中期から明治初期にかけての中野市域の千曲川の治水がどのようなプロセスを経て行われて来たか、意義深い研究会 となりました。 20160115 1月例会報告 2016年、国の重要無形民俗文化財に指定された、野沢温泉道祖神火祭りの見学会を行いました。 午後1時、宿泊先の民宿に集合してから、道祖神祭りの会場や奉納される初灯籠(3基)を順番に見学しました。 いったん宿に帰り夕食を済ませた後、午後7時過ぎに火元をもらう家を訪れました。大勢の見学者が見守る中、 1時間ほど日本酒の振る舞いがあり8時過ぎ松明に火がつけられました。30分ほどをかけて火祭り会場に移動しました。 社殿の上には42歳の厄年の男性が登り、火のついてない松明の束を盛んに投げ落としました。この松明を使って社殿に 火をつけようとする村人と、25歳厄年の男性との攻防が繰り広げられました。1時間30分の攻防の末、社殿に火がつけ られました。その後3基の初灯籠は順番に社殿の火の中へ、投じられました。 この見学会は長野県民俗の会と共催で実施しました。多田井幸視委員のご尽力により、有意義な会となりました。 参加者12名。 20160521 2016年総会 2016年5月21日(土)午前10時〜12時に第1回理事会・委員会が開かれ、定期総会での提案内容の検討が行われまし た。 1 定期総会 2015年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。荒井和比古会計監査員か らは会費の値上げと、会員の減少といった厳しい現実があるが、先輩の事業を継承してほしいといった話がありました。 2016年度事業計画、会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。また、事務所移転についての話がありま した。事務所は一戸建てで部屋は3つ、駐車場は2台で少人数の打ち合わせに使えるとのことでありました。 続いて、第11期役員の提案があり、承認されました。任期は2016年〜2018年の3年間。 山浦寿会長の退任のあいさつ、小松芳郎新会長の挨拶がありました。月刊『信濃』の重要性が強調されました。 2 研究発表 前澤健氏から「年貢割付状からみる榑木成村支配」の報告がありました。榑木を納める村の年貢割付状の文言の分析、 年貢割付状の変遷について報告がありました。 3記念講演 「歴史における支配とは何か」長野県立歴史館館長 笹本正治氏 河内の鋳物師の支配、武田信玄の支配の根拠から、真田氏の支配の正当性について言及されました。 参加者60名。 20161008 第2回地方史講座(茅野市)の報告 10月8日(土)、茅野市文化センター(茅野市公民館)を会場に、第2回目の地方史講座を開催しました。茅野市教育 委員会の後援を得て、尖石遺跡や国宝土偶で知られる茅野市とその周辺における「八ヶ岳山麓の縄文文化」をテーマに とりあげました。 ぐずついた天候ながら、32名の参加者を得ました。 午後1時、小松芳郎信濃史学会会長のあいさつに続き、三上徹也会員から「国宝土偶を考える」と題した講演を聴きま した。 『信濃』に発表した2本の論文を軸に、諏訪の考古学の幕開けに小平小平次の存在があったこと、小平次の弟の小平 雪人の活躍、小平次の蔵書や考古遺物を納めた「龍谷文庫」の役割、諏訪湖底の曽根遺跡についてなど、諏訪考古学の 研究がどのようであったかを聞きました。また、最近の研究から国宝土偶の意義づけなど興味深い話がありました。 鵜飼幸雄会員からは「八ヶ岳西山麓の縄文遺跡群と集落関係」と題して、講演がありました。 35年ほど前に『信濃』に発表された八ヶ岳西山麓の縄文中期の論文を軸に話が始まり、その後現在に至るまで発掘など を通じて、どのような研究成果があがっているのか詳細な報告がありました。 特に八ヶ岳山麓における遺跡群(棚畑遺跡、駒形遺跡、上の平遺跡など)が時代を追って、集落形態などがどのように 変化したのか非常に興味深い内容でした。 2つの講演のあと、45分にわたる熱心な質疑応答がなされました。 4時間にわたる充実した地方史講座となりました。参加者32名。 20161126 第101回セミナー報告 第101回セミナーが2016年11月26日(土)、長野県立歴史館(千曲市屋代)で行われました。 信濃史学会小松芳郎会長から主催団体を代表して挨拶があり、続いて会場館である県立歴史館の代表として、青木隆幸 学芸部長が歓迎の挨拶をされました。 午前11時から、尾崎行也会員が「城下町へ分け入る―上田城下町の場合―」の報告を行いました(写真)。昼を挟んで 午後1時30分からは 高原正文会員から「松本近郊の在郷町<成相新田>の成立と展開について」の報告がありました。 午後2時35分から伊坪達郎会員の「飯田町と周辺村々をつなぐ振商札・糸札―商品流通の発展とその掌握―」の報告が ありました。閉会行事の際、出張先から駆けつけていただいた、本会会員で県立歴史館長である笹本正治氏から ご挨拶がありました。 最後のまとめと閉会のご挨拶を、信州近世史セミナー大橋昌人代表(本会会員)から頂戴しました。参加者51名。 今回は、江戸時代の城下町と、その町を取り囲む村の動きについて、上田・安曇・飯田の事例を報告していただきま した。内容の濃い、意義深い研究会となりました。参加者51名 20170103 1月例会(向方のお潔め祭り)報告 2017年1月3日(火)、晴天の空の下で天龍村向方のお潔め祭りを見学しました。 午後1時に天龍温泉おきよめの湯に集合し、宿泊先のコテージ事務所で見学会の説明を三石稔長野県民俗の会事務局長 (本会会員)から受けました。午後2時頃に向方の天照大神社境内の公民館へ移動し、向方のお潔め祭り芸能部の 村松さんから祭りの歴史についてお話をお伺いしました。 午後4時過ぎから本殿の左手にある下宮の湯釜に火が入り、神事が始まりました。 この見学会は長野県民俗の会と共催で実施しました。多田井幸視事業委員、三石事務局長の綿密な準備とご尽力により、 有意義な会となりました。参加者12名。 20170503 5月例会 (民俗)報告 長野市鬼無里の屋台と鬼無里神社春季例大祭の見学 5月3日(水)に 鬼無里神社春季例大祭の見学を行いました。長野県民俗の会との共催。 10時、鬼無里ふるさと資料館に集合し、職員の方から解説を受けながら舞台会館の見学をしました。小森明里氏から 「屋台の『寄託』をめぐって」の報告を聴きました。昼食後、舞台の曳航を見ました。参加者11名。 20170520 2017年度総会報告 2017年5月20日(土)9:30〜11:30に第1回理事会・委員会が開かれ、定期総会での提案内容の検討が行われました。 1 定期総会 2016年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。青木教司会計監査員から は健全財政に向けた会長を初めとする事務局の努力の様子が語られました。 2017年度事業計画、会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。 2 研究発表 本島和人氏から「宮下功『満洲紀行』を読む−昭和18年夏教学奉仕隊と青少年義勇軍送出−」の報告がありました。 飯田市歴史研究所満洲移民研究ゼミナール編『宮下功「満洲紀行」』がこの報告に間に合わせるように発刊されました。 高森町の宮下功が1943年8月13日〜9月23日にかけて満蒙開拓青年義勇隊教学奉仕隊の一員として満洲視察に 参加したが、その記録について詳細な報告がありました。 続いて水沢教子氏から「自然科学的手法による文化財の分析・保存ー千曲市屋代遺跡群の事例からー」と題しての報告 がありました。試行錯誤して保存処理をした屋代遺跡木簡が発掘当時のまま保存されている現況の報告と、縄文土器に 使われた土の種類の分析によって交流の歴史がわかるとの報告がありました。 3記念講演 「もう一人の小林一茶 百姓弥太カとその時代」国立歴史民俗博物館名誉教授 高橋 敏 氏 俳諧師としての側面からの一茶ではなく、遺産相続をめぐる争いを行った百姓弥太郎としての一茶について講演が 行われました。参加者45名。 20171007 第3回「地方史講座」(上田)報告 今年で3回目となる「地方史講座」を上田市で開催しました。1回目は中信の安曇野市穂高で民俗を扱いました。2回目 の昨年は南信の茅野市で考古学、今回は東信で中世史の講演を行いました。 10月7日(土)、上田市塩田の生島足島神社に所蔵されている武田将士たちの起請文について、寺島隆史本会会員から 講演をしていただきました。2時間に及ぶ講演は厚みのあるものでした。 上田市教育委員会に共催していただき、上田市中央公民館の大会議室を使わせていただきました。 参加者34名。 20171203 第102回セミナー報告 2017年12月3日(日)13時から長野県立歴史館講堂で第102回セミナーを開催しました。今年の研究テーマは「信州と 身分制社会」。飯山市ふるさと館の宮澤崇士氏から「松代の家臣団」と題して、松代の足軽など武士身分に関わる事例 報告がありました。続いて小諸市古文書調査室の斎藤洋一氏から「維新前後の身分をめぐる動向」と題して被差別部落 身分に関わる講演がありました。参加者131名。 20180519 2018年度定期総会・研究発表・記念講演報告 2018年5月19日(土)10:00〜11:50に第1回理事会・委員会が開かれ、定期総会での提案内容の検討が行われました。 1 定期総会 13時〜13時45分 2017年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。清水祐三会計監査員から は基金に頼らない会計運営ができよかったことなどが語られました。 2018年度事業計画、会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。 2 報告 14時〜14時45分 後藤芳孝副会長から、昨年会員から寄せられた信濃史学会への要望や意見などについて、アンケート結果の報告が なされました。 個人会員の傾向についての報告では、20代、30代の会員が少ないこと、男性の会員が圧倒的に多いこと、職業別では 教員、公務員が多いこと、近世史に関心を持っている会員が多いことなどの説明に続いて、会員の意見・要望の報告が ありました。今後、委員会で検討していくことになりました。 3 記念講演 14時50分〜16時30分 「古代・中世の温泉ーもう一つの日本宗教史ー」 信州大学特任教授 牛山佳幸 氏(写真) 古代の温泉地と仏教との関わり、摂津有馬温泉と律宗との関わり、武士の進出による温泉地支配の変化について、 講演を聞きました。 参加者38名 20180722 7月例会報告 2018年7月22日(日)10時30分から15時まで、安曇野市豊科郷土博物館において夏季企画展「どうする?葬式 どうなる?葬式」にあわせて7月例会を開催しました。主催は安曇野市豊科郷土博物館、共催は信濃史学会と長野県 民俗の会でした。 午前は山形村教育委員会の大島幸子氏から「山形村における婚礼について〜ふるさと伝承館所蔵婚礼関係資料を中心に 〜」の研究報告、午後は福澤昭司氏の講演「わたしの終末活動」を聞きました。参加者17名 20181020 第三次『信濃』七〇周年記念研究集会の報告 信濃史学会の機関紙である第三次『信濃』は、昭和24年(1949)に第一巻を創刊して以来、今年で70巻を数えました。 これを記念して、「地域史研究の役割と課題」というテーマのもとに、平成30年(2018)10月20日(土)13時から ホテルモンターニュ松本で記念研究集会を開催しました。 12時20分頃から受付をはじめ、13時に後藤副会長が開会を宣言、小松会長のあいさつに続き、川上元長野県文化財 保護協会会長から来賓の祝辞をいただいた。 記念式典では、学生フレッシュ論文表彰・投稿本数最多者表彰を行いました。13時50分から高埜利彦学習院大学名誉 教授が「ほこり高き『信濃』の存在」という演題の記念講演をしました。 15時20分、シンポジウムに移り、小松会長の基調報告、パネリストの佐賀大学の青木歳幸氏、長野郷土史研究会の 小林竜太郎氏、の山中さゆり氏から報告をしていただき、会場からの発言や提案がありました。 17時の閉会後、記念撮影を行い、17時30分、懇親会となりました。参加者70名。 20181209 信濃史学会第 103回セミナー報告 12月9日(日)、長野県立歴史館(千曲市屋代)の第一研修室で近世史セミナーを行いました。講堂改修の事情から 小さな会場でのセミナーとなりました。 今年テーマは、近世の地方都市の生活はどうであったのか、考古学と文献史学の両面から迫りました。 松本市教育委員会文化財課課長補佐の竹内靖長さんから「近世の都市の生活ー松本城下町跡の発掘からー」の報告が ありました。 松本市では外堀復元事業、三の丸・伊勢町の調査などの発掘が目白押しに行われています。事例報告に続き、滋賀県の 近江商人が松本にもたらした「保知煙管」など中山道を通じた流通が発掘から見えるなど、興味深い報告でした。 本会会員で長野県出身でもある畿央大学准教授の塩原佳典さんから、「近世・近代移行期における松本地方の医療環境 ー病院・医学校をめぐる「公」の行方ー」の講演がありました。 明治の初め、公的病院がどのように設置され変遷していったか、詳細なデータと史料からの報告でした。明治4年(1871) 藩知事の意向で旧全久院に病院が設立されますが、同11月筑摩県設置に伴い一時閉鎖。南北安曇郡・東筑摩郡住民から の拠出金によって松本公立病院が維持されるなど変遷を見ました。明治12年、コレラの流行による医療格差があらわに なったこと、明治13年には大町村に「大町分病院」を設立しようという動きなど公的な医療体制確立へ向けてどの ような模索が続いたのかなどの講演でした。参加者33名。 20190518 2019年度定期総会・研究発表・記念講演報告 2019年5月18日(土)10:00〜12:00に第1回理事会・委員会が開かれ、定期総会での提案内容の検討が行われました。 1 定期総会 13時〜14時 2018年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。青木教司会計監査員から、 基金に頼らない会計運営ができよかったことなどが語られました。 2019年度事業計画、会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。 2 報告 14時10分〜15時 原田和彦氏から「歴史学から見た近世信濃の地震」と題した報告がありました。安政東海地震について、松代藩の 郡奉行日記と松本藩の被害図から史料批判の手法が必要との提案がなされました。続いて、善光寺地震の情報について、 村の中の情報、代官が入手した情報、郡奉行に報告された情報、藩主への報告の情報、罹災の体験記、江戸で書き 写された情報を比較分析し、正確なのは村の中の情報(記録)であって、地震史料としてのその性格を把握して扱う ことの重要性が指摘されました。 3 記念講演 15時10分〜16時30分 中央学院大学教授の白水智氏から「求められる歴史学〜多分野との協同、地域への貢献」と題した講演がありました。 海村研究から山村研究に軸足を移し、長野県栄村に仲間と調査に入りました。箕作村島田家史料の研究にめどがついた 2011年、震災に襲われました。ゴールデンウィーク明けから、文化財レスキューの活動を始め、年間10回、栄村で 活動をしました。地域資料保全有志の会を立ち上げ、人が常駐し公民館として機能し、文化財を管理する栄村歴史 文化館 「こらっせ」が誕生しました。この間、民俗学、林学、生態学など他分野の研究者との協同研究が行われました。 震災との関わりや、関連諸科学との協同研究など、示唆の多い講演でした。 参加者31名 20190927 穂高神社御船祭り見学会報告 今回の民俗例会は(公財)八十二文化財団主催の「穂高神社の御船祭りの習俗」見学会を信濃史学会、長野県民俗の会、 安曇野市教育委員会の三者が後援する形で、9月27日(金)穂高会館及び穂高神社で開催いたしました。財団側が募った 参加者が長野市から安曇野まで移動する車中での引率講師を多田井幸視会員が務めました。移動後、穂高会館において 松本・安曇野周辺の参加者も加わり、高原正文会員による講義「安曇野最大の風流 穂高神社の御船祭り」が行われました。 午後、参加者は市中に出て穂高神社までの間「風流(ふりゅう)」としての御船の曳行を見学しました。神社に到着して からは御船本体や船の人形飾り・小袖飾りの詳しい説明がなされ、自由見学の後、御船祭りのハイライトともいうべき 大人船2艘・子供船3艘による「御船神事」(「オフリョウ渡し」と呼ばれ、御船がお囃子も賑やかに神楽殿3周)を見学。 特に終盤の大人船2艘による5回以上ものぶつけあいは、この御船祭りの最大の見せ場となり、安曇平に伝わる幾つもの 御船祭りの中でも最も勇壮なものでした。ここの御船祭りの伝統が実に奥深いものであることが理解できました。 参加者は56名。 20191005 第4回地方史講座報告 第4回目となる今回の地方史講座は信濃史学会と(公財)八十二文化財団の初の共催により10月5日(土)午後1時30分 から長野市の八十二銀行別館で行われました。講師に本会会員で元長野県立歴史館総合情報課長の 宮下健司氏 を迎え 「戸隠信仰と高距御師集落」についてお話いただきました。お話から平成29年2月に宿坊群として初となる重要伝統的 建造物群保存地区に選定された戸隠中社・宝光社地区の歴史的町並が1000m超えの高標高地に計画的に形成された集落で あり、戸隠講の旦那場を日本各地に有したことや、戸隠信仰の歴史を支えた両地区で御師と在家が共存で発展してきた ことなどを学ぶことができました。参加者70名。 20191208 第104回セミナー報告 10月の台風19号により長野県を初めとした東日本各地で大きな被害が発生した。復興に向けた作業が日夜行われ てきました。 信濃史学会では、2015年、「災害に向き合う地域社会」というテーマで研究会を設けました。中野市教育委員会と 中央大学が協同で千曲川の治水を主とする地域の災害関係史料の調査・研究をしました。3人の研究報告と中央大学 教授の山崎圭氏からの講演を聞きました。 今回のセミナーは2019年12月8日(日)長野県立歴史館の講堂をお借りし、「近世の災害とその復興」という研究 テーマで開催しました。水害に加えて火災や震災といった災害についての実態はどうであったのか、その復興が どのようになされたのか、広い見地に立って研究会を開催したいということで3人の研究者の方に報告をお願いしま した。 10時30分に開会。会場館の笹本正治県立歴史館長から歓迎のご挨拶、主催団体を代表して小松芳郎信濃史学会長から ご挨拶がありました。 研究発表1(10時40分〜11時30分) 青木隆幸会員から「学際的に考える洪水 ー戌の満水についてー」と題して報告でした。寛保2年(1742)の戌の 満水は台風によって引き起こされました。その台風の進路について、歴史気象や文書の記載を使って詳細な分析を おこないました。 研究発表2(11時30分〜12時20分) 伊坪達郎会員から「近世飯田町の火災復興と消防体制」と題して報告がありました。天明3年(1783)と文政6年(1823) に起こった飯田の火災の概要の説明、飯田藩のお救いや町民たちからのお見舞いの様子が示されました。さらに、 飯田藩の消防隊製がどのように整備されていったのか、多数の史料を使った報告でした。 講演(13時30分〜15時) 立命館大学歴史都市防災研究所客員研究員の北原糸子氏から「日本震災史―今、なにが問われているのか」と題した 講演を聞きました。元禄地震(1703年)、宝永地震(1707)、寛保の洪水の復興のために幕府は各藩のお手伝い普請と いう方法をとりました。近代の災害として関東大震災の事例を取り上げました。さらに2011年東日本大震災の遺体の 処理についても言及しました。 15時10分から大橋昌人信州近世史セミナー代表からのご挨拶で閉会となりました。 参加者120名。 20200725 2020年度定期総会・研究発表・記念講演報告 2020年7月25日(土) 13:00〜16:30に松本市県 あがたの森文化会館にて、定期総会・研究報告・記念講演会が開かれ ました。本来総会を5月9日(土)に開催予定で準備を進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染の影響が懸念され、 延期としました。 役員で再度開催時期を検討し、開催にあたって手指の消毒、ソーシャルディスタンス、会場の換気等の感染防止策を 実施し、参加者にはマスク着用をお願いするなどの条件で開催することにしました。 例年、総会の前におこなわれていた理事会・委員会は、事前にメール等で理事・委員との意見交換を充分おこなうこと で計画立案をし、総会へ提案することになりました。 1 定期総会 13時〜13時48分 2019年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。2020年度事業計画、 会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。 2 報告 13:50〜14:30 市東真一会員から「松本市における天白社の研究―天白稲荷を中心に―」と題しての研究報告がありました。 旧松本城下にある天白と名の付く稲荷社を事例に天白信仰を考察しました。 天白稲荷は@伏見稲荷よりの勧請、A松本城主石川数正との関係がある、Bご神体が石であること、C境内に隕石の 伝承があるなどの指摘がありました。 3 記念講演 14:50〜16:30 伊藤純郎筑波大学教授から「満州移民と長野県」と題して記念講演がおこなわれました。 1満洲移民という研究テーマ、2大日向村の満洲分村移民、3『満洲分村の神話』を執筆して考えたこと、4満洲移民 研究のこれから の4つの章立てで講演がなされました。 参加者36名 20201024 第5回「地方史講座」の報告 地方史講座は、歴史愛好家を含めて多くの市民の方に身近な地域の歴史に親しんでいただき、様々な視点から地域の 歴史を見つめ直していくことを目的に始めました。2015年の安曇野市(第1回)を皮切りに、茅野市(第2回)、上田市 (第3回)とつづき、記念大会のため1年は休止し昨年、第4回目を長野市で開催しました。今年は中信地区に戻り、 第5回の地方史講座の開催となりました。 日時 10月24日(土) 13時20分〜15時30分 場所 松本市あがたの森文化会館 主催 信濃史学会 共催 八十二文化財団 今回の地方史講座は、本会会員で塩尻市文化財保護審議会委員でもある太田秀保氏に講演をお願いしました。 テーマ 「赤蓑騒動について」 文政8年(1825) 年に安曇郡四ヶ庄(現白馬村)から起こった赤蓑騒動について、この騒動の記録がどのように作られ、 広まっていったのか、活字記録や古文書を丹念に集め分析をしました。参加者 32名。 20201205 第105回セミナー報告 第105回セミナーを2020年12月5日(土)長野県立歴史館でおこないました。 今年のセミナーは「古文書を守る」と題して、地域に眠る古文書など地域資料の調査や保全について考えたいとして 計画をしました。本セミナーは、信州近世史セミナー及び長野県立歴史館との共催行事でおこないました。 13時、会場館である笹本正治長野県立歴史館長のあいさつ、主催者を代表して小松芳郎信濃史学会長の挨拶から始ま りました。 研究報告は、「小諸市古文書調査室の取り組み」と題して市川包雄会員からおこなわれました。古文書目録の発行、 古文書等の整理、古文書解読講座、出前講座の講師、調査依頼への対応など地域に密着した活動の様子が紹介され ました。民俗資料を見てほしいといった話から、古文書の寄贈になった事例、家を壊しているので資料を見てほしい といった切実な要望の事例などの事例が紹介されました。 続いて国文学研究資料館准教授の西村慎太郎氏から「『ウィズ・コロナ』社会の地域歴史資料保全」と題しての講演が ありました。 最初に2014年11月20日長野県史料保存活用講習会での報告内容の確認がありました。 自治体における所在調査蓄積の重要性として、三重県では県史編纂時にあった史料が、2007年に古文書所在調査をする と17.2%が廃棄・散逸・不明となっていたこと、大分県でも3割もの史料が行方不明となっている事例が紹介された。 災害時に歴史資料保全することの重要性として、古文書などは個人情報を含むので任意団体では扱いにくいこと、自治 体が情報を蓄積すべき点が強調されました。 次に立科町芦田宿本陣土屋家の壁裏紙文書解体、山部高橋家文書保存・調査活動についての紹介がありました。また、 NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴんについて、静岡県南伊豆町・東京都檜原村での保存・調査活動について話されま した。 2000年以降の地域社会と文化財の課題として、古文書の散逸の原因が代替わり、引っ越し、年末の大掃除、災害、 ネットオークションなどにある点が指摘された。文化財と観光について、文化財保護法の改正、史料の保存とまち づくり、文化財の予算などについても言及しました。 covid-19蔓延の状況下での歴史資料保全の事例として、NPO法人に27件の寄贈等の相談があったこと、報告会を行う 困難さなどが紹介されました。歴史資料の保存について 今後どのように取り組んでいったらよいのか多くの示唆を 受けた講演会でした。 信州近世史セミナーの大橋昌人代表から講師へのお礼の言葉が述べられ閉会となりました。参加者33名。 20210107 1月例会報告 信濃国分寺八日堂縁日の講座・展示見学 1月実施の民俗例会は、令和3年1月7日(木)、上田市立信濃国分寺資料館の講座室をお借りし、上田市信濃国分寺 の八日堂縁日に厄除けの「蘇民将来符」が頒布されるのにあわせて講座・見学会を実施しました。八十二文化財団主催、 長野県民俗の会と本会の共催。 午後1時20分、八十二文化財団、長野県民俗の会、信濃史学会の各代表からの挨拶につづき、元上田市立博物館館長 倉澤正幸氏から「八日堂の蘇民将来符頒布習俗について」と題して、講演をしていただきました。 最初に古代、中世、近世にかけての遺跡から呪符木簡として出土した蘇民将来符の形態の変化を検討した。信濃国分寺 の蘇民将来符は室町時代の板状の木札から立体的な四角柱へと変化しました。江戸時代中期には頭部に傘を持った六角 柱に変わり、明治期の初めには色鮮やかね現在の護符へとなりました。 講演後、午後2時45分、講師の案内で蘇民将来符や八日堂縁日習俗展示品を見学しました。新型コロナ感染症のため 八日堂縁日は自由参観としました。参加者26名。 20210508 民俗例会報告 今回の民俗例会は5月8日(土)、「千曲川の漁撈習俗」と題して自然と人間活動のかかわりについて学びました。10時 から近年では珍しくなった千曲川でのつけば漁の見学を「吉池つけば漁」小屋で行いました。13時からは長野市立博物 館に移動して、樋口明里学芸員の解説で企画展「千曲川の魚とり」を見学しました。14時から神奈川大学教授で 日本常民文化研究所所長でもある安室知氏による 「海なし県の漁撈文化―その先進性と現代性―」と題した講演会を 聞きました。佐久の鯉とつけば漁について取り上げ、詳細な資料を使っての講演会でした。八十二文化財団と長野県 民俗の会との共催事業で行いました。参加者32名。 20210522 2021年度定期総会・シンポジウムの報告 2021年5月22日(土)総会・シンポジウムの準備のため、役員は 9:00に松本市Mウイング(中央公民館)に集まりま した。 今回はZOOMを使った講演やオンライン配信を行うため、WiFi設備の整ったMウイングを使うことになりました。 手分けをして机・椅子の準備、看板の設置、パソコン設備等の準備を進め、10:00にはほぼ準備が整いました。 10:00から10:50まで第1回理事会を3−2会議室でおこないました。 1 定期総会 11:00〜12:00 6階ホール 2020年度事業報告・会誌編集報告・会計報告が行われ、会計監査報告ののち承認されました。青木教司会計監査員から 健全な会計運営ができよかったこと、また信毎賞で頂戴した賞金を有効に使ってほしいことなどが語られました。 続いて2021年度事業計画、会誌編集方針、予算案の提案がなされ、承認されました。 2 シンポジウム13:00〜16:30 6階ホール 13:00から「公文書と地域資料の保全」をテーマにして基調講演、事例報告、シンポジウムが開催されました。後藤芳孝 副会長の開会の辞につづき、小松芳郎会長からシンポジウム開催の趣旨説明がなされました。 13:10から、早川和宏東洋大学法学部教授から「長野県における公文書等の管理と課題」と題しての基調講演がありまし た。公文書館法から長野県公文書管理条例まで、法学者の立場からかみ砕いたわかりやすい講演を聞きました。その中 で長野県公文書管理条例の課題等の指摘がありました。 5分の休憩を挟んで、14:15から長和町教育委員会の勝見譲氏の「上田・東御・小県地域における公文書、地域資料保全 の取り組みについて」の報告、14:35から安曇野市文書館の青木弥保氏の「『重要文書』とは何か─安曇野市の取り組み ─」の報告、14:55から長野県立歴史館の村石正行氏の「地域資源としての公文書・地域資料を散逸させないために ─長野県立歴史館の史料収集と公開─」報告がありました。 15:20から16:10まで早川・勝見・青木・村石・小松芳郎各氏がパネラー、福島正樹事業委員がコーディネーターとなり シンポジウムがおこなわれました。会場からいくつも質問や発言があり活発なシンポジウムとなりました。 16:10、小松会長から県知事等に提出する「公文書・地域資料の保全と、『長野県史』現代編等の編集事業実施について の要望書」の提案がありました。県内25の歴史系の研究団体等へ要望書(案)を送付し、本日までに18団体から賛同 の回答があったとの報告がありました。 16:25に閉会となり、片付けの後、散会となりました。 会場への参加者39名、オンラインでの参加者35名、計74名の参加でした。 20211017 第6回 地方史講座の事業報告 10月17日(日)13時30分から上田駅前ビルのパレオ二階会議室をお借りして、第6回地方史講座を開催しました。 信濃史学会では、来年2022年4月に長野県公文書管理条例が本格施行するのに合わせて、昨年12月の近世史セミナーを 皮切りに、5月には「公文書と地域資料の保全」と題して、シンポジウムを開催しました。今回、全ての市町村に 文書館・公文書館が設置された上小地区を地方史講座の研究テーマに取り上げることにしました。 講演を本会会員で、上田・東御・小県地域史連絡協議会会長でもある小平千文氏にお願いしました。 演題は「全市町村に公・文書館を!!ー上田・東御・小県地域史連絡協議会の活動からー」。 (講演の概要) 長野県下に公文書館・文書館は県、市町村合わせて13カ所あります。そのうち上田・東御・小県地区では、2020年10月 1日に青木村に文書館ができたことで全ての市町村に設置されたことになりました。 1、公・文書館設置運動のあゆみ 全国の公・文書館設置は3期に分かれます。第1期は1955年の山口県文書館の設置、第2期は公文書館法の公布 (1987年)から公文書管理法の公布(2009年)まで、第3期は公文書管理法の施行(2011年)から現在までの3期です。 2、「市民運動によって公文書館ができるのは珍しいこと」 上小地区では、地域住民にも公文書館設置への夢の輪を拡げ、公・文書館設置の必要性を求める陳情や請願、啓蒙活動 を行い、行政や議会とも連携して公・文書館設置運動をおこないました。 3、上田・東御・小県地域史連絡協議会の結成 2003年から17年の歳月をかけ、上田・東御・小県地域の全市町村に公・文書館の開館をみることになりました。その核 となったのが、2005年から活動を始めた上田・東御・小県地域史連絡協議会であったのです。 4、全市町村に公・文書館を!! 長野県の全市町村に公・文書館が設置されることを確信しています。 主催は信濃史学会と公益財団法人八十二文化財団で、上田情報ライブラリー(上田市)から共催を頂きました。 参加者23名。 20211204 106回セミナー報告 信濃史学会106回セミナーを2021年12月4日(土)13時30分から長野県立歴史館の講堂で開催した。伊坪達郎委員の 司会進行により開会が宣言され、中野亮一県立歴史館学芸部長の歓迎の挨拶、主催団体を代表して小松芳郎本会会長の 挨拶があった。 最初に塩澤元広氏から「江戸時代の感染症と人びとの対応ー南信地方の事例から−」と題して研究報告があった。江戸 中後期における雲雀沢村(下伊那郡阿南町)と近村の史料、下市田村(旗本座光寺領、下伊那郡高森町)の史料から、 疱瘡、麻疹、痢病などの実態の紹介があった。また、乙事村・松目新田村(諏訪郡富士見町)の史料を使って、 疾病対策の背景として、相互扶助の伝統、自治・自衛意識の高さなどがあったことが示された。 青木教司氏から「旗本諏訪氏旗本知行所と松本藩における幕末の感染症対応」についての報告があった。安政5年の 百瀬陣屋のコレラの流行について、流行の経路、時期、幕府から示された感染対策などについて話があった。次に 文久2年の麻疹の流行と百瀬陣屋の対応として、疫病を退散させる儀礼として鉄砲の打ち放しがあったこと、文久2年 の麻疹とコレラの流行に対して松本藩は疫病退散のため祝祭の奨励をおこなったこと、等の指摘があった。幕末の庶民 が疫病に対峙するために隔離政策をとっていたことなどの指摘もあり、江戸時代でも今と同じ対応策をとっていたこと に驚かされた。 参加者30名。 20220521 2022年度(令和4年度)定期総会・研究発表・記念講演報告 2022年5月21日(土)、松本市あがたの森文化会館の講堂をお借りし、定期総会を開催した。 この日は午前中、10時から理事会と各委員会が開催され、総会の進行内容が確認された。 13時から総会が始まった。後藤芳孝副会長からあいさつがあった。冒頭、2月にお亡くなりになった小松芳郎会長の 冥福をお祈りするため、1分間の黙祷を捧げた。 原良通・福澤昭司両氏に議長をお願いし、議事を進行した。2021年度事業報告及び決算報告、会計監査報告をおこなっ た。 つづいて、新会長の選出について、小野事業委員長から会則第9条2項により、午前中の理事会で後藤副会長を新会長 に選出した旨の報告があり、承認された。 後藤新会長のあいさつ後、役員体制選出に先立って、会則9条では副会長は1名となっているが、若干名に変更したい との提案があり、承認された。また、新役員の提案もあり承認された(新役員については後日HPに掲載予定)。 つづいて、2022年度事業計画及び予算について提案があり、承認された。 その他として、後藤会長から議会請願と、県への要望についての報告があった。また、事務局から役員会の旅費規程の 改定の提案があり承認された。 総会に続き、村石会誌編集副委員長から学生フレッシュ論文の審査結果報告があり、後藤会長から大淵菜音子氏に 表彰状ほかが贈られた。 10分間の休憩後、学生フレッシュ論文の入賞を果たした大淵菜音子氏から「西海捕鯨業における鯨組と地域秩序−近世 後期平戸藩領小値賀浦を事例として−」の報告があった。 報告では鯨組と藩とのつながり、漁場社会同士の藩の境を越えたつながりについて概要が述べられた。本報告は 長崎大学の卒業論文であり、今後の研究に向けた課題も整理され、これからの研究を期待するものであった。 15時から、国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学名誉教授である井原今朝男氏から、「新しい県史に向けての提言」 と題した講演を聴いた。 昨年、信濃史学会などから「長野県史現代編等の編纂事業実施と公文書・地域資料の保存・活用の充実を求める請願」 が出され、11月30日に長野県議会で採択された。今年4月からは県立歴史館に現代史担当専門主事の配置された。県史 編纂に向けて3つの課題があるとの指摘があった。 県史の現代史編が必要だとする県民世論の合意形成がなされているかどうか、県が現代史編さん体制を構築する人的 資源があるかどうか、現代編・資料編さんに向けて緊急に行うへき課題があるのではないか。 先行研究として信濃史学会編『長野県民の戦後六〇年史』(信毎書籍出版センター2008)があるが、時代区分に問題が あることの指摘があった。 歴史学の現代史研究に不可欠な現代資料の史料化には限界性や困難性がある。当事者個人の書簡・日記・歴史的価値 ある文書・特定歴史的文書などの一次資料の史料化は、1970-90年代までが限界になっているのではないか。中小企業の 海外進出と倒産企業や社史編纂室をもたない民間企業の関係史料は散逸が激しく消滅事例が大半である。革新政党・ 労働組合・当事者団体などの多くの関係史料は散逸状態で所在も不明状態である。現代史・同時代史の歴史事象を 歴史学の手法で生の史料群によって論証することは、史料的に限界性をもたざるをえない等々の指摘があった。 日本史研究者による現代史資料編・現代史編さんではなく、政治学・行政法・自治体研究者や、現代社会の研究者で ある社会学・人類学・経済学などの学際的研究者と市民参加の編さん検討委員会を組織して、県民のための、現代人に よる現代社会を記録する現代編として編さんする方向性を追求しつつ検討と準備を早急にすすめる必要がある。 県民参加による県民のための現代社会を記録するためには、なにが必要なのか、長野県ではなく、長野県民にとって、 現代人として現代社会のなにを記録として残したいのかについてのパブリックコメントを含めて意見聴取する体制を早 急に調査・準備する必要がある。 信濃史学会でも、会員から県史の現代編でとりあげてほしいテーマや先行研究の推薦などのアンケートや意見集約など で、県民参加の現代編編さんのムードを高める取り組みが必要ではないか、との指摘があった。 参加者45名。 202210/02 10月民俗例会 10月1日(土)、秋晴れの空の下、10月の民俗例会が開催された。多田井幸視信濃史学会理事と公益財団法人八十二 文化財団の早見千津子の入念な計画と事前下見・交渉によって充実した巡検となった。信濃史学会と長野県民俗の会、 八十二文化財団友の会会員、一般参加者が参加した。参加者42名。 今回は本棟造り民家3箇所をめぐる巡検であった。 多田井理事の説明 「松本平・安曇平を中心に、県の中信から南信にかけて分布する本棟造り民家は、国内でもこの地域だけに分布する切妻 妻入りの特色ある民家です。母屋の柱、壁、屋根材料の全てに木材が使われ、一般に見られる茅茸寄棟造りの民家とは 造りが違います。」 8時30分に事業委員が松本市内田の馬場家住宅に着いた。9時25分、八十二文化財団の友の会会員ほかがバスで到着、 合流。 9時35分、八十二文化財団の岩渕元英常務理事、信濃史学会の後藤芳孝会長の挨拶に続き、3人の方からの報告が あった。 前馬場家住宅館長窪田雅之氏から「馬場家住宅の保存活動」と題して、馬場家の保存の原点は市民活動にあったことの 報告があった。信濃史学会理事の多田井氏から「松本平の本棟造り民家について」と題して、本棟づくりの特徴が 詳しく語られた。馬場家住宅の宮下慶祐学芸員から「馬場家住宅の見学」と題して、馬場家の歴史について報告が あった。 報告の後、3グループに分かれての見学会となった。窪田氏から馬場家の前に広がる景観と、祝殿についての説明、 多田井氏から馬場家住宅の各部屋の特徴、宮下氏から馬場家が所有する非公開部分の隠居屋、茶室の説明があった。 昼食後、塩尻市堀ノ内の 堀内家住宅に移動し見学。多田井理事の説明後、堀内健氏の奥様から家屋の説明を受ける。 内部に上がらせていただいた。 つついて 上伊那郡辰野町小野宿に移動。 小野家住宅(問屋)と小澤家住宅(油や)に分かれて見学をした。小野宿の見学には辰野町教育委員会の協力を得た。 15時30分解散。 20221009 第7回 地方史講座 10月9日(日)13時30分から赤穂公民館地域交流センターで、第7回地方史講座を開催しました。主催は信濃史学会と 駒ケ根市公民館協議会で、公益財団法人八十二文化財団から共催をいただきました。 人文地理の研究者である、本会会員の山口通之氏に講演をお願いしました。 演題は「上伊那の景観育成の現状と課題」です。 (講演の概要) 平成17年に我が国で初めて景観法が制定され、その前後から各地で景観形成に向けた取り組みが高揚し現在に至って います。上伊那のほとんどの自治体が景観計画を策定し、地域住民の熱意による景観住民協定が安曇野に次いで多い ことをみても、景観に関する感度が高い地域といっても過言ではありません。 まず、講演に入る前に景観法と文化的景観と文化財保護法との関係、長野県景観条例について説明がありました。 つづいて上伊那の「景観住民協定」の先駆的な取り組みとして、城下町高遠・まちづくり協定の歴史を整理し、看護 大学周辺地域(駒ヶ根市)の景観住民協定の歴史についても取り上げました。 上伊那地域の景観の特徴として、自治体が製作したキャッチフレーズにある「アルプス」が入れられていること、 小中高の校歌に山や川の表現が盛り込まれていることを紹介しました。最後に伊那市西箕輪の景観形成の取り組みの 具体的な事例から景観を守るための取り組みと課題について報告がありました。 参加者35名。 20221204 第107回セミナー(近世史セミナー) 第107回セミナーを2022年12月3日(土)長野県立歴史館でおこなった。 今年のセミナーは「江戸時代の大名家」と題して、信州の大名家(高遠藩内藤家、松代藩真田家)に焦点を当てて 研究報告を行った。本セミナーは、信州近世史セミナー及び長野県立歴史館との3者による主催行事としておこなった。 13時、会場館である笹本正治長野県立歴史特別館長のあいさつ、主催者を代表して後藤芳孝信濃史学会長の挨拶から 始まった。 研究報告1は、「高遠藩内藤家の参勤交代」と題して大澤佳寿子氏から報告があった。高遠藩は保科、鳥居、内藤と 藩主家が代わるが、このうち内藤家8代の参勤交代について分析をおこなった。参勤交代は中山道ルート、甲州道中 ルートのどちらかを使ったが、5代内藤長好(ながよし)以降は甲州道中ルートが多かった。また、参勤交代の回数は 3代内藤頼由(よりゆき)が最も多く、高遠を去る際に去るのは名残惜しいといった手紙も紹介された。 続いて研究報告2は、「真田家伝来の大名道具ー婚礼道具にみる「印」と「文様」についてー」と題して米澤愛氏から 報告があった。真田家ゆかりの女性たちが輿入れの際に持ち込んだ婚礼道具の箱につけられたラベルなどから道具の 来歴を分析した。一般的に婚礼道具には実家の家紋と嫁ぎ先の家紋を配するが、箱のラベルや文書をみると修復や紋を 付け替えることをおこなって、母の婚礼道具を娘たちがもらって嫁いでいった例があった。また、藩主の正室らの道具 や収納箱には、「〜印」と書かれた墨書や焼き印があり、来歴の手がかりになること、西条藩(愛媛県)松平家の女性 には特定の「文様」が決められ、用いられており、この文様も道具につけられているところから来歴を追っていくとき の手がかりとなるといった報告があった。 参加者72名。 20230513 2023年度(令和5年度) 定期総会・記念講演報告 2023年5月13日(土)、松本市あがたの森文化会館の講堂をお借りし、定期総会を開催した。 この日は午前中、10時から理事会と各委員会が開催され、総会の進行内容が確認された。 13時から総会が始まった。後藤芳孝会長からあいさつがあった。 山口通之・福島正樹両氏に議長をお願いし、議事を進行した。2022年度事業報告及び決算報告、会計監査報告をおこな った。 つづいて、2023年度事業計画及び予算について提案があり、承認された。 25分間の休憩後、14時10分から、龍谷大学准教授の瀬畑源氏から「長野県の歴史公文書の管理を考える〜長野県公文書 管理条例施行後の課題」と題した講演を聴いた。 (以下概要) 1 長野県の公文書管理条例制定の経緯 阿部守一知事の取り組み 2018年の知事選挙の選挙公約で条例制定の検討を明記した。 知事が条例化を決断したのは、大北森林組合の不正事件、国の森友事件で公文書管理に注目が集まったことと、「しご と改革」や県政への住民参加のための情報公開の推進という自分の政策とかみ合ったためではないか。 長野県の場合、「特定歴史公文書」の定義は移管した公文書のみであって、私文書は入らない。県情報公開・法務課の 説明では、県立歴史館は「博物館法」に基づいた施設のため、「公文書館法」に位置付けられていないためとのことで あった。 2 公文書審議会での公文書管理規程等の審議 駆け込みの廃棄を避けるため、保存期間30年を超える文書の廃棄は2021年度にはできないようにした。1952(昭和27) 年度までに作成、取得した公文書は原則移管となった。 2022年4月から予定通り条例が全面施行された。 3 公文書廃棄の意見聴取 廃棄が適当と報告されたファイル数は、70,747件で、公文書審議会によって廃棄は不適当として2,347件のファイルが、 移管か保存年限の延長となった。この公文書以外、主管課が移管と判断したファイル数は1,208件であった。移管が適当 とみなされた文書は廃棄公文書全体の約5%であった。 リストが公文書審議会委員に来る前に選別をきちんとおこなうアーキビストの支援がほしい。 瀬畑氏の報告のレジュメがしっかり作られ、長野県の公文書条例の制定と、その後の動きについてよくわかった。 5分の休憩をはさみ、福島氏の司会で、講師と聴講者との意見交換がおこなわれた。 参加者33名。 20231015 第8回 地方史講座の報告 10月15日(日)、第8回の地方史講座を八十二別館AV研修室(長野市)で開催した。今年も公益財団法人八十二文化財 団に共催を御願いした。 地方史講座は県内4地区を順番に回り、地域で活躍している研究者に報告をしていただき、研究の成果をより多くの市 民に提供し、歴史研究者・歴史愛好家の裾野を広げ、会の振興・活性化に繋げることが目的である。 今回の地方史講座は、信濃史学会会員で井地方史研究会副会長である樋口和雄氏に講師をお願いした。 樋口氏は令和5年3月、『妙高山信仰〜山頂をめざした村びとたち〜』(木島平村教育委員会・ふるさと資料館発行)と いう冊子をだした。この冊子の内容を織り交ぜながら、講演が進んだ。 「330年前の妙高山絵図」や「入峯の許可状と旗印」などの資料を写真で紹介し、妙高山信仰のイメージを膨らませてい ただいた。 江戸時代、妙高山への入峯(にゅうぶ、入山)は毎年6月23日だけと決められていた。先達(せんだつ)と呼ばれた指 導者(案内人)が仲間を率い、参拝した。信者が登山するには、妙高の霊山を護持していた宝蔵院(ほうぞういん、天 台宗の寺)の許可状が必要であった。 講演の中で、延宝二年(一六七四)の先達許可状が現在確認できる最古の許可状であること、先達が持っていく先達旗 (小印)は村ごとデザインが決められていたことなど、豊富な現地調査を通じて妙高山信仰の実態を解き明かした。 参加者41名。 20231110 シンポジウム「史資料の収集・保存・散逸防止と史誌編さん」の報告 11月10日(金)13時から、長野県立歴史館講堂にて、史誌編さんと史資料についてのシンポジウムを、長野県史料保存 活用連絡協議会(略称 県史料協)とともに開催した。 また、県内歴史研究団体・史資料保存活動団体から共催を得た。 開催の趣旨として以下の点を挙げた。 長野県公文書管理条例の運用が本格化し、新しい長野県史の編さんに向けた準備も始まった。またいくつかの自治体で も史誌編さんが進んでいる。編さんに欠かせないものは史資料である。その収集・保存・調査研究・散逸防止等がどの ような状況にあるのか、また戦後の歴史を編さんする上でどのような史資料に注目し収集・保存をはかっていけばよい のかなどについて、考える機会としたい。 県史料協事務局の鈴木実氏の司会進行でシンポジウムは始まった。 長野県史料保存活用連絡協議会会長 笹本正治氏、信濃史学会会長 後藤芳孝氏から開会の挨拶があった。 まず村石正行氏(県史料協事務局・理事)から「長野県の史誌編纂の歩みと課題−県史編纂から30年」と題しての報告 があった。 続いて問題提起が4団体からあった。 桂木惠氏(上田小県近現代史研究会事務局長)「近現代史資料の保存と活用について−主として民間の史資料に関わっ て−」 小林一郎氏(長野郷土史研究会会長)「小冊子の発行を通して思うこと」 高見俊樹氏((一社)大昔調査会代表理事)「史資料の収集保存から、新しい史誌編さんへ一大昔調査会の活動を通じて 一」 松島耕二氏(須坂市文書館学芸員(認証アーキビスト))「アーカイブズにおける資料(歴史公文書専)の保存と整理− ○○のために、歴史資料は半本久的に保存される−」 10分の休憩を挟んでシンポジウムが行われた。 登壇者 桂木・小林・高見・松島・村石各氏 司会・コーディネーターは福島正樹(信州大学特任教授・本会事業委員)で行われた。 参加者55名。 20231202 第108回セミナー報告(近世史セミナー) 第108回セミナーを2023年12月2日(土)長野県立歴史館でおこなった。 今年のセミナーは「近世の林業史を考える」と題して、信州の林業の歴史について研究報告を行った。本セミナーは、 信州近世史セミナー及び長野県立歴史館との3者による主催行事としておこなった。 13時、伊坪理事の司会進行で開会となった。会場館である笹本正治長野県立歴史特別館長、主催者を代表して後藤芳孝 信濃史学会長から挨拶があった。 研究報告1は、「榑木の渡入の実現過程ー享保六年を中心にー」と題して前澤健氏から報告があった。 榑木は、近世に屋根材として使われた椹材のことで、米の代わりに伊那山や木曽山の農民に年貢として榑木役が課せら れた。榑木を山中の渡場から川に入れ運搬することを「渡入(どいれ)」と呼ぶが、この「渡入」は三遠南信地域にま たがる広域役として存在した。榑木の運搬をめぐって、飯島代官や今田代官の関わり、飯田藩や旗本の動きなどを詳細 に分析した。 続いて研究報告2は、「松本藩戸田家の時代の林業ー表勘定所役人の仕事を中心に」と題して菊入三樹夫氏から報告が あった。 松本藩表勘定所の山方がどのような職務を行っていたのか、出役日記などを使いながら事例が報告された。 信州近世史セミナーの大橋昌人代表から講師へのお礼の言葉が述べられ閉会となった。 参加者40名