2022年度(令和4年度) 定期総会・研究発表・記念講演報告

2022/05/22


 2022年5月21日(土)、松本市あがたの森文化会館の講堂をお借りし、定期総会を開催した。
 この日は午前中、10時から理事会と各委員会が開催され、総会の進行内容が確認された。
 13時から総会が始まった。後藤芳孝副会長からあいさつがあった。冒頭、2月にお亡くなりになった小松芳郎会長の冥福をお祈りするため、1分間の黙祷を捧げた。
 原良通・福澤昭司両氏に議長をお願いし、議事を進行した。2021年度事業報告及び決算報告、会計監査報告をおこなった。
 つづいて、新会長の選出について、小野事業委員長から会則第9条2項により、午前中の理事会で後藤副会長を新会長に選出した旨の報告があり、承認された。
 後藤新会長のあいさつ後、役員体制選出に先立って、会則9条では副会長は1名となっているが、若干名に変更したいとの提案があり、承認された。また、新役員の提案もあり承認された(新役員については後日HPに掲載予定)。
 つづいて、2022年度事業計画及び予算について提案があり、承認された。
 その他として、後藤会長から議会請願と、県への要望についての報告があった。また、事務局から役員会の旅費規程の改定の提案があり承認された。
 総会に続き、村石会誌編集副委員長から学生フレッシュ論文の審査結果報告があり、後藤会長から大淵菜音子氏に表彰状ほかが贈られた。

 10分間の休憩後、学生フレッシュ論文の入賞を果たした大淵菜音子氏から「西海捕鯨業における鯨組と地域秩序−近世後期平戸藩領小値賀浦を事例として−」の報告があった。
 報告では鯨組と藩とのつながり、漁場社会同士の藩の境を越えたつながりについて概要が述べられた。本報告は長崎大学の卒業論文であり、今後の研究に向けた課題も整理され、これからの研究を期待するものであった。

 15時から、国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学名誉教授である井原今朝男氏から、「新しい県史に向けての提言」と題した講演を聴いた。
 昨年、信濃史学会などから「長野県史現代編等の編纂事業実施と公文書・地域資料の保存・活用の充実を求める請願」が出され、11月30日に長野県議会で採択された。今年4月からは県立歴史館に現代史担当専門主事の配置された。県史編纂に向けて3つの課題があるとの指摘があった。
 県史の現代史編が必要だとする県民世論の合意形成がなされているかどうか、県が現代史編さん体制を構築する人的資源があるかどうか、現代編・資料編さんに向けて緊急に行うへき課題があるのではないか。
 先行研究として信濃史学会編『長野県民の戦後六〇年史』(信毎書籍出版センター2008)があるが、時代区分に問題があることの指摘があった。
 歴史学の現代史研究に不可欠な現代資料の史料化には限界性や困難性がある。当事者個人の書簡・日記・歴史的価値ある文書・特定歴史的文書などの一次資料の史料化は、1970-90年代までが限界になっているのではないか。中小企業の海外進出と倒産企業や社史編纂室をもたない民間企業の関係史料は散逸が激しく消滅事例が大半である。革新政党・労働組合・当事者団体などの多くの関係史料は散逸状態で所在も不明状態である。現代史・同時代史の歴史事象を歴史学の手法で生の史料群によって論証することは、史料的に限界性をもたざるをえない等々の指摘があった。
 日本史研究者による現代史資料編・現代史編さんではなく、政治学・行政法・自治体研究者や、現代社会の研究者である社会学・人類学・経済学などの学際的研究者と市民参加の編さん検討委員会を組織して、県民のための、現代人による現代社会を記録する現代編として編さんする方向性を追求しつつ検討と準備を早急にすすめる必要がある。
 県民参加による県民のための現代社会を記録するためには、なにが必要なのか、長野県ではなく、長野県民にとって、現代人として現代社会のなにを記録として残したいのかについてのパブリックコメントを含めて意見聴取する体制を早急に調査・準備する必要がある。
 信濃史学会でも、会員から県史の現代編でとりあげてほしいテーマや先行研究の推薦などのアンケートや意見集約などで、県民参加の現代編編さんのムードを高める取り組みが必要ではないか、との指摘があった。
 参加者45名。

2022年度(令和4年度) 定期総会・研究発表・記念講演報告

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