20240609 2024年度(令和6年度) 定期総会・記念講演報告

2024/06/09


 2024年6月9日(日)、松本市あがたの森文化会館の講堂をお借りし、定期総会を開催した。10時から理事会と各委員会が開催され、総会の進行内容が確認された。
 13時から総会が始まった。後藤芳孝会長からあいさつがあった。
「長野県の文化行政が教育委員会から知事部局に移った。新県史の編纂についてどのようにしていくのか確認をしていきたい。また、信濃史学会の役員体制は13期の終わりの年である。14期に向けて役員の選出を協議をしていきたい。」
 山口通之・福島正樹両氏に議長をお願いし、議事を進行した。
 2023年度事業報告及び、編集報告、決算報告、会計監査報告をおこない承認された。
後藤会長から「昨年度の論考では、県外の執筆者が少なかった。全体に投稿が多いわけではなく、編集に苦労する。」との発言があった。
 清水祐三会計監査委員から会計監査報告があったが、その際次のようなコメントが寄せられた。
「信濃史学会の収入のほとんどが会費であり、支出のほとんどが会誌発行で占められる。財政面がひっ迫しており、予算案は役員手当の減額により編成をした。」 
 つづいて、2024年度事業計画及び予算について提案があり、承認された。
 20分間の休憩後、14時10分から、統一テーマを「近現代の信州を考える」とし、研究報告、記念講演を聞いた。参加者51名。

(以下概要)
研究報告  地形図に見る戦後の長野県の変貌ー土地利用・産業・交通を中心にー』
 報告者 畔上不二男氏(山ノ内町教育委員会)
 県内各地における戦前と戦後の地形図を比較しながら、果樹栽培の変遷、観光業の進展等について分析をした。長野県の産業は、地理的要因により多くが規定される。扇状地と果樹栽培、気候では雪とスキー場、少雨と果樹栽培等である。

記念講演 「聴く」からひらく、信州の近現代
 講師  慶應義塾大学教授  清水唯一朗氏 
 隈板内閣の研究から研究の道に入った。高校時代の先生から上條宏之先生の紹介を受けた。長野県内の高校の探究学習では、オーラルヒストリーを使っているところがある。
 政策判断をする瞬間は、記録に残っていない。台湾では、声なき声を記述している。
 社会学の調査で、構造化インタビューとうのがある。例えば、構造化インタビューを選挙の時などの調査で行うとことがあるが、全く同じ質問をして、聞き取る。どのような情勢なのか正確に把握することが重要視される。これに対してオーラルヒストリーの調査法は、半構造化インタビューといった調査方法をとる。ライフヒストリーを聞き取ることがこれに当たる。
 現代史を中心とした新県史編纂では、文献ではわからない決定事項について、実際に生きている当事者から聞くことができる。オーラルヒストリーの調査を行う際には、聞き手を3人配置し、別に記録係を置いて調査をした。若手にも質問してもらうことで、更に奥深く聞き出すことができる。
(質問)
 Q:オーラルヒストリーで気を付けるところは何か?
A:聞き手は3人くらいがいい。1人では難しい。最低2人がいた方がいい。  
 Q:民俗調査を行う際、最近では公民館や会議室に集まってもらって、聞き取りをとることが多くなっている。本来であれば、話者のお宅に伺って聞き取るのが良いのではあるが。聞き取りの場所についてはどうか?また、動画などの記録についてはどう思うか?
 A:聞き取りの場は、話者の記憶を呼び起こしやすい場所が良いかと思う。官僚から聞き取りを行ったが、何年にどのようなことがあったのかといった聞き取りでは、思い出さないことがあった。「あの時は、同僚にだれだれがいましたね」と問いかけると、思い出してもらえた。聞き取りの場の設定は大事である。
 話者からの聞き取りの際、動画を撮ることもあるが、動画は話し手に緊張感を与える。写真も途中であると緊張感を与えてしまう。終わったあとで撮影をする。このような工夫をしている。

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